第25回 アメリカ ハーバード大学 ケネディースクール大学院・アメリカ/マサチューセッツ州立大学 アマースト校大学院留学/渡邊裕子さん―後編― | 留学経験者インタビュー

 

アメリカ/ハーバード大学 ケネディースクール大学院留学
アメリカ/マサチューセッツ州立大学 アマースト校大学院留学

渡邊裕子さん

今回は渡邊裕子さんの留学経験者インタビューの後編になります。

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 目次
 留学したことでどんな影響がありましたか(留学で得たもの)
 今後の展望(ご自身の夢など)についてお聞かせください
 これから留学を考えている人へのメッセージ

 

留学したことでどんな影響がありましたか(留学で得たもの)

まず、「視界が広がった」「世界観が変わった」ということがとても大きいです。自分がそれまでいた世界がいかに狭いものだったか、日本での生活がどれだけ恵まれているか、単一民族の日本という国がどのくらい特殊か、ありきたりな言い方になりますが、そういう事実に日本を出てみて初めて気づかされました。また、アメリカでの生活を通して私が学んだことには、言葉だけでなく、宗教、政治、人種問題、歴史など、アメリカ社会や文化に関わる問題、さらに広くは西洋社会や文化といったものに対する生身の理解といったことも含まれます。これらの多くは、実際にその社会にどっぷり漬かって生活し、そこに住む人たちと日々関わってみて、初めて判ることではないかと思います。

次に、文字通り、世界中に、本当に友達と呼べる、共に学生時代を過ごした仲間ができたのは、留学のおかげでできた財産です。私のケネディースクールの同級生たちは、約90か国から集まっていて話す言語は合計110か国語でした。おかげで、世界地図を見ると、いろいろな国に、友達の顔が重なって見えるようになりました。

 

それ以外にも言い出せばきりがありませんが、一つには、この20年間、私がニューヨークでアメリカ人やそれ以外の様々な国籍の人々と肩を並べて英語で仕事をしているのは、アメリカで教育を受けたという地盤があってのことです。もちろん日本を一歩も出なくても英語を習得できる人はいますが、私にとっては、必要なことだったと思います。そして、英語を自由に操れることのメリットは、英語を母国語とする人と喋れる、ということだけではありません。それと同じくらい重要なこととして、英語を外国語として喋る人たちともコミュニケーションできる、ということがあります。相手がロシア人でも、中国人でも、オランダ人でも、お互い英語ができれば、英語で分かり合える。このことがあなたの世界を、人との出会いの可能性をどれだけ広げるか。それが人生に与えるインパクトは膨大なものがあると思います。

 

 

最後に、重要なこととして、20代前半で親元から離れ、一人で外国に出て行くという経験を経て、当然ながら、否応なしにある程度の精神的自立を余儀なくされました。その結果、私は、明らかに以前よりも孤独に強くなったと思います。私が日本を初めて出て、一人で海外生活するようになった頃(1993年)は、今のようにインターネットが発達していませんでした。メールもまだありませんでしたし、当然FacebookのようなSNSもありません。国際電話は今よりずっと高かった。だから、日本に電話なんてよっぽどのことがない限りできませんでしたし、日本にいる家族や友達と連絡したければ手紙を書くのがせいぜいでした。でも、人間には、一人になって初めて自分と向き合えるという部分があります。20代のあのとき、徹底的に日本から切り離され、日本語から切り離され、「本当に一人なんだ。本当に遠くに来たんだ」と実感するという経験を一度しておいて良かったと思います。

 

今後の展望(ご自身の夢など)についてお聞かせください

私は前の職場では、日本の文化や社会について、アメリカ人に向けて紹介・教育する仕事を8年間していました。今の職場では、国際社会で起きていることについて日本のビジネスマンたちの理解を高めるためのお手伝いをする仕事を約10年間しています。思うに、今後の人生も、こうして、日本とアメリカの間に立ち、双国の理解を高め、人物交流の手伝いをするようなことを仕事にしていくのだろうと思います。

それに日本で育った期間とアメリカに渡ってからの期間がほとんど変わらない私にとっては、もはや日米のいずれもが故郷です。これから先、地球のどこを拠点に生活するにせよ、この2つの国のためになることをやっていきたいと思うし、それが日本人でありながら長年アメリカの組織に身を置き、アメリカ人たちと共に仕事をしてきた自分のような人間に求められている役割だろうと思っています。

 

これから留学を考えている人へのメッセージをお願いします

人生に無駄な経験というのは一切ないし、若い時であれば尚更そうです。英語で“If you are scared, do it.”(怖いと思うなら、やってみなさい)、“What doesn’t kill you makes you stronger.”(辛いこと、苦しいこと、痛いことがあっても、死なない程度のことならば、あなたをむしろ強くしてくれる)という言い回しがあり、いずれも私の好きな言葉です。良いことも悪いことも含めて全ての経験が、自分という人間を豊かに、逞しく、骨太にしてくれるものだと考えるべきだと思います

私は、人生、目的地に最短距離で到達することを目指さなくても良いんじゃないかと思っています。面白いものは、ゴールへの途中にもいっぱい落ちています。その、道の途中で落ちているものも含めて全部楽しめば良いし、それが何か別の、全く思いがけないものに繋がるきっかけをくれるかもしれません。

上述の通り、留学には様々なメリットがあると思います。ただ、「こういうメリットがあるから留学する」という、逆算したアプローチは、賢いのかもしれませんが、私には、正直言ってつまらない、ちっちゃな考え方に思えます。それよりは、もっとおおらかな気持ちで、とにかくどこへでもとりあえず行って、なんでもやってみたら良いと思います。じっとして何もしないよりは、とりあえず何かやってみて、あちこちぶつかったり失敗してみたほうがよっぽど意味のある時間の使い方だと思いますし、少なくともそこから何か学べます。そして、何かを一生懸命やってみて苦しいところを抜けたとき、次に何がやりたいかが見えてきます。あれこれ先回りして分析するよりも、まずは一歩を踏み出してみること、飛び込んでみること、それが大事だと思います。

 

 

 


上記は掲載時の情報です。予めご了承ください。最新情報は関連のWebページよりご確認ください。


 

 

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