【インタビュー】「Science Olympiadへの挑戦」第13回 科学の甲子園優勝校 栄光学園中学校・高等学校インタビュー

「Science Olympiadへの挑戦」第13回 科学の甲子園優勝校 栄光学園中学校・高等学校インタビュー

ETS Japanは、全国の高校生が、理科・数学・情報等の複数の分野で科学の力を競う「科学の甲子園全国大会(主催:科学技術振興機構)」に協賛しています。2024年3月に行われた「第13回科学の甲子園全国大会」の優勝校には、米国にて開催される全米の科学好きの高校生が集う「Science Olympiad」への参加資格と、2日間の英語研修が授与されました。今回は「第13回科学の甲子園全国大会」で優勝し、「Science Olympiad」に参加された、神奈川県代表・栄光学園中学校・高等学校のみなさんと、顧問の塚本英雄先生に、印象的なできごとやScience Olympiadでの感想などお伺いしました。

 

 目次
 印象的なできごとや感じたことを教えてください
 競技の感想

 

印象的なできごとや感じたことを教えてください

Science Olympiad

引用元:Science Olympiad Inc., OFFICIAL WINNER PHOTOS より

 

藤井さん
藤井さん

気候については日本だと夏がジメジメしていて湿気が多いんですけれど、アメリカは湿気が少なくて過ごしやすかったです。参加していた生徒はインド系や東アジアか東南アジアの人種の人たちが多く、 またコミュニケーション能力が高いなと思いました。事前にDiscordっていうLINEのようなSNSで、大会に行く前からコミュニケーションを取っていたので、その人たちと会えたのがけっこうよかったです。具体的な出来事としては、 Robot Tour持っていったロボットの部品が壊れた時に、Discordで知り合った1人が、「余っているのあるよ」と言って譲ってくれました。結局、直すことはできなかったですけども、本当にありがたかったです。

大沼さん
大沼さん

Opening Ceremonyではっぴを着たのですが、交換したいと言ってきた生徒がいました。私は「個人的に大切なものだから交換できない」と繰り返しはっきり断ったのですが、「交換してくれるまで絶対にここから動かない」と居座りはじめ、また電卓を出して「はっぴは何円の価値と思うからこっちの方が高いから大丈夫」と言って粘られてしまいました。断られても意志を曲げない精神力を持った人間は日本にはなかなかいないなっと思うので、国としてのその歴然とした人格の差を感じました。
あと、想像よりも物価が高くてお金が足りなくなりました。去年の話で2万円あれば足りると聞いたのですが、足りなくて塚本先生にUS$10借りました。飲み物我慢したのに足りなかったので、今後海外に行くときには余裕をもっていこうと思いました。

山中さん
山中さん
去年も参加したので去年と比較する感じで話すと、今年はトランジットがなかったんで体力に余裕を持って移動することができて、観光も去年よりかなり楽しめたと思います。観光で一番印象に残ったのは他でもなく、物館の隣にあった展示物。エセ科学情報みたいなのが大量に詰まったカーテンでそれが制作者が意図してやったのか知りませんが、見ててみんなが楽しめるものですごいなって思いました。

山中さん
山中さん

その他、寮が去年よりも古く築50年ぐらいで、鍵が硬すぎて開けるのに5分ぐらい格闘しました。またトイレが流れなかったり、シャワー室はカビで埋まり尽くしている状況ですごい世界でした。食事にも苦労しました。脂っこいものはもう食べられないと思う時があって、シリアルならばさっぱりしてるから食べると思っていたのですが、そのシリアルも、物凄く甘くて辛かったです。

稗田さん
稗田さん

現金がなくなる可能性があると思ったので、私はデビットカードを持っていきました。アメリカでは自動販売機でも売店でもどんな場所でも基本的に使えるので、デビットカードは持っていくのが便利で良いと思います。また、私はお茶や水がなかったことが一番辛かったです。さっき山中さんがシリアルの話をしていましたが、シリアル用の牛乳が出る場所があったんです。朝からジュースを飲むのが辛いので、シリアル用の牛乳を飲むことでなんとか耐えることができました。あと初海外でしたが、行く前はアメリカ人は個々で動くイメージがありましたが、実際は中国系とかインド系などいろんな人種が結構混ざってる感じで、チームとして割とまとまっている印象を持ちました。
その他、英語に関しては、僕は他のメンバーより全然英語が得意ではありませんが、話せば意外と通じるっていうことに気づきました。あまりちゃんとした英語じゃなくても、話したいことは割と理解してくれました。 最初話しかけてくるときはかなり早口で喋られるんですけど、自分が日本人でネイティブじゃないことを伝えると、大抵の人は話すスピードをちょっと遅くしてくれました。

加藤さん
加藤さん

アメリカに到着して大学の寮の近くの地元で人気なメキシコ料理屋さんに夕食を食べに行きましたが、料理の量を完全に誤ってしまってしまいました。サラダが直径10cmぐらいのお皿で来ると思っていたら、直径がだいたい25~30cmぐらいの平皿の上にこぼれる寸前まで盛ったサラダがきました。野菜だけでなく豆や色々入っていて重くてお腹に溜まる量でした。想像の5倍くらい。基準が日本と違うなっていうのを感じました。
もうひとつは、今年僕はScramblerという工作競技に参加したんですけど、日本にいる間に機体を完成させることができなくて、アメリカに着いたあと寮の廊下で実際に車を走らせて調整をしていましたが、その調整をしている時に同じ寮に泊まっている他のチームの学生の人が話しかけてくることがたまにありました。これは日本の科学の甲子園とかだとあんまり見られない光景だなと思いました。また、ちょうど同じ競技に出場する生徒と会話をするいい機会になったと思います。

中川さん
中川さん

アメリカに行ったときに日本との違いを見つけるのが楽しかったです。 例えば家に星条旗を掲げてるところが多く日本だと日の丸を公的な建物でしか見られないので、国としての意識をいろいろなところで感じました。また日本だと割と歩行者が多いので信号待ちの時間も割と短くないように設計するんですけど、アメリカだと車が多くどんどん走っているので、あまり歩行者に優しくない信号だと思いました。
現地の人たちとの交流については、英語を話すことが結構苦手だったんですけど、なんとなく相手の言ってることが分かりました。普通の英語のテストと違うところに文脈があると思うのですが、それで大体何を言いたいのか補強されて理解し易くなりますが、そこが英語の授業を受けているだけでは気づけないことだと思います。
また、現地の人たちにモータードライバーをもらったりして、ああすごい温かいなぁと思いました。日本人も優しい方はいますが、
アメリカ人もまた優しいねって思いました。

金さん
金さん

私も去年も参加をしましたが、トランジットがなかったことで時間的余裕があり去年よりも寮に一日長く泊まれたので、大学の施設や食事だったりには去年よりも触れたかなということをまず思います。大学の話で言うとキャンパスツアーに行きましたが、そこで360度スクリーンに囲まれたところがあって、そこにプロジェクターが6個ぐらいあり360度全面を照らす施設があって、かなりの額の金額を投じて作ったと聞いたのでかなり驚いたのと、そこでストリートビューで栄光に帰ってきたり、そこのストリートビューを見て楽しかったです。これは去年も感じたことなんですけど施設が本当に充実していて、やはりかけてるお金の桁が違うなっていうことを思いました。

永田さん
永田さん

アメリカに行って、着いた時から結構日本と違うところがたくさんあるなあと思いました。まず外見ても歩行者がほぼいなく車に乗っている人が大半であることや、買い物に行ったスーパーマーケットで物価が高くて円安の洗礼を浴びたことなど思い出します。最初はすごい高いなと思いましたがすぐに慣れてきて、日本の自販機がめちゃくちゃ安く感じました。あと現地の方やScience Olympiadに参加している生徒が結構フレンドリーで食堂でも話しかけたり、深夜Scramblerをやってるときにも結構話しかけてくれました。あとは何より宿泊した大学がめちゃくちゃでかい。大学のキャンパスツアーでも凄さを感じましたし、先ほど金さんも言っていたように、かけてるお金が違うと感じました。閉会式での賞金の額も高くて、単純に桁が違うなあっていうのを感じました。

 

栄光学園中学校・高等学校チームワークの良さが伝わる楽しいインタビューでした

 

 

競技の感想

各競技に参加するにあたり対策したことや、今後日本から出場する後輩に向けてアドバイスを伺いました。

 

 

Write It Do It(参加者:金是佑さん、稗田和希さん

金さん
金さん

去年もWrite It Do Itに参加したこともあり、だいぶ練習をしていきました。去年は私が学校の文化祭で忙しかったこともあって全然練習できず、リベンジを兼ねて今回もWrite It Do Itに参加して、大沼さんと私がオブジェクトを作り私がそれを書いて稗田さんに渡してビルドしてもらうことを、材料を調達して練習しました。ですが結果的に出題されたのはかなり平面的なオブジェクトで、平面的でさらにそのモールのような難しいパーツがない、つまり何か物をその物の方向を決めて、どっかの上に置くだけみたいな。それの繰り返しのオブジェクトだったので、そういう意味で練習があんまりできなかったなということを思いました。それで去年よりも問題の難易度が高く去年よりも成績が下がってしまい、リベンジはできずちょっと悔しいです。

でも今年学んだことは、イベントのスーパーバイザーを見ることが大事だと思いました。去年と今年でWrite It Do Itのイベントの主催者が同じで、去年も平面的なオブジェクトが出て去年はそれに救われてたんです。ということもあり、イベントの主催者を見て平面的なオブジェクトが出るということを予測するべきだったなっていうのがまず一個あります。あとそういう平面的なものって、正確に伝えることよりも、どれだけ多くの情報量が書けたのか、ビルダーの作り上げる能力、時間の能力がかなり関わってくると思うので、本当に練習するしかないと思いました。また今回は文法もかなり気にして作ったので、より本当に練習しかないと思いました。

稗田さん
稗田さん

私はdoerで作る方をやりました。日本チームは材料の名前が英語で書かれてる紙をGoogle翻訳したものがもらえるのですが、トランプの英語が “かるた” に訳されるなど、一瞬意味が分からない部分もありました。次に出る人は英語と日本語の両方を見ながら読んでいった方がいいなと感じました。あと今回は小さな直径0.5cmより小さい紙の丸のようなものを、適切な場所に何個も並べるという指示があり、20分間という少ない時間の中で、とても大変でかなり苦労したっていうのはあります。あんまり練習で難しいことをやるよりかは、その適切な方向に置くみたいな簡単なことを練習した方が良いかなと思いました。早く簡単なことを処理できるかが結構重要だったと思います。

Write It Do It について
2人1組で行う競技で、1人はどのように組み立てるのか説明を書き、それに基づいてもう1人の生徒がそのオブジェクトを構築する競技。競技の詳細はこちら

Robot Tour(参加者:中川柊哉さん、藤井悠貴さん)

中川さん
中川さん

結論から言うと準備不足だったので、納得いかないというかリベンジしたい成績でした。私は文化祭の準備に追われつつScience Olympiadの準備をしなければいけなかったので、準備の時間が足りませんでした。その中でどんな準備をすべきだったかって考えると、とりあえず早く機体を動かして後からその修正点をしっかりとあぶり出していくのが結構重要だと思います。あと重要なことはスペアのパーツを買っておくことです。具体的にした準備は、私は主にロボットを動かすようなプログラムを準備しましたが、それをロボットに搭載する時にうまくいかずに、プログラムのバグか機体のバグかがアメリカに行くまで判然としませんでした。結局、動かなかった原因は、重要な部品のうちの一つが壊れていたことでしたが、特定がかなり遅れてしまいました。アメリカに行って修正をしましたが、間に合わなかったことが悔やまれる点です。

藤井さん
藤井さん

私は機体の制作の方をやりましたが、うまくいかなかったことの原因で、まず一つ目に工学をナメていました。そしてもう一つは文化祭をナメてました。その二つでロマンがあるけれども「本当にそれできるのかな」と、現実性が不確かな危ないプランを選びました。文化祭が思ったよりも忙しくて、気づいたら1週間しかありませんでした。当初の計画にはなかったので、そもそも機体の製作自体が全然間に合わなくなり、プログラムを調整する時間もない状態でした。もし機体がもっと早く完成してたら発見をもうちょっと早くできて、部品修正できたかなって今でも後悔してますので、できれば来年は頑張りたいです。先ほどロマンがあるけれども、だいぶリスクの高いプランを選んだと言いましたが、実は塚本先生がプランBを作ってくれていたので、先生の機体を使って競技自体をすることができたことはだいぶ大きくて感謝しています。

 

Robot Tourについて
チームが1台のロボットビークルを設計、製作、プログラム、テストし、決められた時間内にできるだけ正確かつ効率的に目標に到達するようコースをナビゲートする競技。競技の詳細はこちら


Forensics(参加者:山中秀仁さん、大沼拓実さん)13位

山中さん
山中さん

Science Olympiadの運営側によって過去問が突然有料化されてしまい、去年まで無料で見れた過去問が一切閲覧できない状況になり、有志の方が作ったサイトを見て、それを片っ端から丸暗記して対策するっていう方向になりました。

大沼さんが学校の化学科の先生にいろいろ相談してくれて、その粉末を識別や判別する実験であったり、私は繊維とかプラスチックを燃やしてみて、どんな感じの挙動をするかなど確かめたりしました。

本番はいろいろありました。私が担当した方で言うと、まず与えられた小さいバイアル瓶に、これは何々が試薬だっていうテープが貼ってあるんですけど字が雑すぎて読めず、何て書いてあるのかを聞いたら、明らかに数字の5にしか見えないんですが、これは3だって言われたり、そのバイアル自体に繊維が入っているのですが、明らかに茶色い繊維と白い繊維の二種類が入ってるので聞いたところ、回答までに1分後ぐらいかかり時間のロスをしました。あともう一つが顕微鏡の実験器具の使い方に関してなんですけど、顕微鏡が日本とかなり違くとても苦労をしました。

大沼さん
大沼さん

文句になってしまいますが、まず始まり方がよくわかんなかったんです。気づいたら試験時間が始まっている状況だったのが、まずかなり衝撃を受けましたね。そういうことがあり、出だしからちょっと不安だぞっていう思いがありました。去年器具が汚かったって話は聞いていましたが、競技を行う建物は3年前に建てられたと聞いたので器具もきれいかなと期待しましたが、壁に白い粉末が付着していて透明ではないガラス器具を渡されたので、その淡い期待は無惨に打ち砕かれました。今回は器具を多少持っていけたので、ペーパータオルなどを持ってったんですけど、向こうにはペーパータオルがないので、ペーパータオルのない粉末同定ってそれは粉末同定としてどうなのって言いたくはなりますが、今回はその問題は回避することができました。

器具の雑な管理の他にも問題の作成ミスなど主催者側の不手際がありました。

 

Forensicsについて
事件現場に残された物的証拠を分析して犯人を特定する競技。英語の資料が与えられ、記述された内容を読み、実験や検証を行い根拠を述べて犯人を割り出す。証拠やデータは物理、科学、生物などの分野にまたがった物証が残されている。論理的な思考と計算力、実験力など総合した科学の技量が問われる競技。 競技の詳細はこちら

 

Scrambler(参加者:永田駿平さん、加藤奏さん) 2位

永田さん
永田さん

Scramblerは結果的にはいい成績でしたが、準備段階ではRobot Tourに負けず劣らず、準備がギリギリになりました。本格的にこの組み立てとかを始めたのが文化祭が終わってから、つまり渡航の1週間前ぐらいになってしまい、そこから急ピッチで制作を始めていろいろな問題が発生して、結果的に当初の設計とだいぶ違ったものが完成しました。渡航の前日の夜ぐらいにようやく車が走るようになりましたが、走ることしかできない。壁の前に停止する機能や、ピンポイントでその方向も左右に照準をつけないといけませんが、その段階でまだ走ることしかできてなかったんです。明らかにまずくて、アメリカに行った後も、大学の寮で深夜まで調整をしてなんとか完成しました。

最終的には距離を設定して発射して直前で止まるというとこまで行きついたのですが、一歩遅かったらRobot Tourのように最悪動かないという事態もあったと思うのでかなりヒヤヒヤしました。反省点としては、文化祭の始まる前までに連携がうまくいっていなかったとか、設計のちょっとした部分で悩んで材料を買うのが遅くなったことです。明らかにやばい準備でしたが、なぜか順位はすごく良かったです。それは、Scramblerが今年から競技内容が変わっていて、ある意味フェアだったからだと思いました。

加藤さん
加藤さん

製作する途中でやっぱり感じたのは、去年Scramblerで20位だった時は、今年のRobot Tourの人たちと同じようなことをやっていて、精度やロマンを求めてやった結果制作が遅れまくった記憶があったことです。去年一回出場している経験が本当に活きて、今年は去年よりも早い段階で取り組みましたし、制作を開始してかつできるだけ脇道にそれないようにと、心がけてやることができたと思います。それでもギリギリになってしまったんですけど。
結果論なんですけども、精度を絶対に下げないようにっていうのでやってきたから、いい順位が取れたと思います。ただそれが精度を求めすぎた結果間に合わなかったら、もっと順位が下がっていたわけで、結構危ない選択を取ったなとは思います。

Scramblerについて
落下する塊からのエネルギーを利用して卵を曲線軌道に沿ってできるだけ速く運び、ターミナルバリア (TB) の中心近くで停止させる競技。 競技の詳細はこちら

 

 

プロフィール

栄光学園中学校・高等学校
1947年にイエズス会によって設立された中高一貫の男子校。生徒一人あたりの校地面積は首都圏で指折りの広さ。キリスト教ヒューマニズムに基づき、生徒一人ひとりが自ら課題を見いだし自己の可能性を最大限に伸ばさせること、生徒自身の能力を他者とともに他者のために用いる精神を育てることが教育の目標。フィリピンの姉妹校との交換留学や米国ボストンカレッジでのリーダーシップ研修など、国際交流も盛んに行われている。
Webサイト:https://ekh.jp/
国立研究開発法人 科学技術振興機構
科学技術振興機構(JST)は、日本の科学技術の発展を牽引する組織として、科学技術を支える人材の育成にも注力している。『科学の甲子園全国大会』はその一環として、2011年度よりJSTが開催している高校生の科学コンテストである。
科学の甲子園 Webサイト:http://koushien.jst.go.jp/koushien/

 


上記は掲載時の情報です。予めご了承ください。最新情報は関連のWebページよりご確認ください。


 

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