TOEFL ITP®テストペーパー版
近畿大学 薬学部(2019年度まで医学部兼任)
教養・基礎教育部門
教授 眞砂薫先生
近畿大学薬学部における、TOEFL ITP®テストの導入や活用方法に関して伺いました。
はじめに
薬学部新入生の英語力の測定とクラス分けの資料とし、併せて入学時からTOEFL®テストを通して英語圏のキャンパス文化を知り、留学や在外研究を身近に感じるための啓発や意識づけにもTOEFL®テストは有効です。
導入の背景
入学時等の英語力測定と成績評価の資料として
医学部では初年時英語教育で成績評価のためのプレテスト、ポストテストとしてTOEIC®テストを使用していましたが、TOEIC®テストはビジネスに特化したテストなので、アカデミックなテスト内容のTOEFL ITP®テストを導入しました。また薬学部を含む東大阪キャンパスにある全学部の入学時統一英語テストとしてTOEIC® Bridgeを導入しましたが、医学部、薬学部では入学者の英語力から考え、同テストではレベル分布を含む資料を得るには十分ではないため、TOEFL®テストを使うことが許されました。
導入の目的
薬学部では、入学時英語力測定テストとして採用しています。医療系学生にとって留学、研修、在外研究にTOEFLテストスコアは欠かせないものとの意識と知識を持ってもらうために採用しました。また大学院の英語教育でも院生にとって英語力は重要なので、大学院の英語科目でもTOEFL ITPテストおよびTOEFL iBTテストについての基礎知識やスコア紹介、問題演習とその解説を通してlogical thinking, critical thinkingを身に付けるような講義を行っています。このTOEFLテスト演習とネイティブによる英語実践演習が組み合わされています。
活用方法
大学内では学内(自主受験自己負担の)TOEFL ITPテストを国際交流室が実施しており、入学時のスコアからのアップを目指して、さらに将来のTOEFL iBTテストに繋げるためにも導入をしました。大学院でもできるだけTOEFL iBTテストに関する知識や実践を講義しています。
薬学部では2018年度から入学生は全員、入学オリエンテーション時にTOEFL ITPテストを受験し、結果は配属クラスの英語教員から返却されます。その際にTOEFL ITPテストについての簡単な解説も(できるだけ)行ってもらいます。TOEFL ITPテストの解答用マークシートも、冊子の問題文、問題解説、指示もすべて英語。新入生にとって(中には理系に語学は不要との誤解を持つ学生もいるので)小さくても重要な「異文化体験」になっています。入学時の英語力測定が国際的に通用するTOEFLテストである意味は大きいと思います。
薬学部の英語教育はTOEFLテスト教育、ESP(English for Specific Purposes)的テキストでの英語教育、e-ラーニングの3つの柱からできています。TOEFLテストで実際のアカデミック英語教育に触れることができます。英語テキストは「共通テキスト」を使用し、医学英語や医療トピックを学びながら、TOEFL ITPテストの読む、聞くに加えて英語プレゼンテーション(1年生は必須)に繋げて書く(プレゼン用英文スライド作り)、話す(発表英語スピーチ)に繋げて、さらに発表チームを、(当日発表以外の)評価チームの間での質疑応答で英語コミュニケーションの難しさを体験します。そのための英語の「筋トレ」に相当するのがe-ラーニングです。授業では講義解説もあり、学生一人ひとりが英語を聞き、読み、話す時間は不十分です。それをe-ラーニングで補います。e-ラーニングは「未達成落第要件」であり、成績の%ではありません。e-ラーニングは重要な基礎トレーニングであり%によってパスすべきものではないからです。これは授業に必要な事前準備学習にも(シラバス上)相当しています。今の悩みはTOEFLテストを前提としたe-ラーニングがない(ETSからも出ていません)ことです。これさえあれば薬学部の英語の3つの柱が繋がるのですが、英語授業は日本人教員担当の週2回、ネイティブ教員担当の週1回で、TOEFLテスト「だけ」の科目は発展科目にあるだけです。つまり、理系・医薬学部は圧倒的に「専門教育」の比重が重く重要です。しかし一方で理系・医薬学部ほどツールとして英語を必要とする学部・分野がないことはいうまでもありません。英語教育に与えられた「少ない時間」で、アクティブラーニング的授業を行うためには、授業時間外の時間をいかに英語学習に充てるかが重要なのです。
TOEFLテストを英語教育として活用するためには、教材・テキストが必要ですが、市販のTOEFLテスト教本・問題集には文字通りの「問題点」があります。理系の内容・英文に「特化した」「理系TOEFLテスト問題集」がないのです。大学院の授業ではTOEFLテスト過去問題から科学・医療の内容のもの「だけ」を選び使っていますが、これは好評です。文系話題では、どうしても英語を「やらされている」感があります。その点理系学生にとって科学話題であるだけでも英語アレルギーが軽減されるようなのです。ETSなど「著作権」のあるところが『ETS 公式版 理系TOEFLテスト問題集』を出していただけるのが夢です。
*補記
TOEFLテストを含めた民間英語テストの問題が2019年末に世間を騒がせましたが、日本では英語教育の意義が一般の方々にはよく理解されていません。近年、高等学校教育はもとより大学教育までもが「基本的に誰でも入学できる」学びの場所となりました。また教育の無償化や奨学金制度の整備が進んでいます。一方、教育があまりにも「就職のための資格」と理解され、親にとって教育は「投資」となって、投資に見合うリターンとして学位や資格が考えられています。ここに英語への「誤解」が生まれます。つまり英語を身に付けることが「将来の生活の保障」ではないということです。かつて「TOEIC®テスト990点問題」がありました。TOEIC®テストのスコアに対するこだわりがマニアックになり、本来のTOEIC®テストスコアの意味が見失われ数字が独り歩きしました。ゲームを攻略するかのようにスコアが捉えられ「TOEIC®テスト高得点者は企業では使い者にならない」などとささやかれることもありました。このコメントには問題もありますが、重要なことは「英語ができて仕事ができない」より「仕事ができて、そのための英語力養成が重要」ということではないでしょうか。
英語を巡っては英語帝国主義、英語ネイティブ神話、などの批判もあり、ネイティブのように英語を使えることが社会階層の上昇の鍵であるとともに「ガラスの天井」を作り、社会階層の固定化や差別までも生み出しています。しかし「子供には英語を」「英語さえできれば将来は安心」などと考える人々はこのような広い視野から英語を捉えることはできません。
たしかにTOEIC®テストはビジネスという分野領域に「特化した」英語テストですので、その分野の人にとってTOEIC®テストの勉強をすることは、仕事力を磨くことにもなるのです。では大学生諸君にとってはどうでしょう。
学生は(インターンシップがあるとはいえ)まだ社会に出ていません。いま必要なのは「アカデミックな英語」「キャンパスで必要な英語」「学問のための英語」です。学生の仕事はアカデミックなものなのですから、そう考えれば現在のTOEIC®テスト偏重教育は誤りです。むしろTOEFL®テストこそ、そこから得られるものは人生を考え決定することに繋がります。とくに読解パートの内容の豊かさには驚きます。医薬系の話題、病理病態に関する記述からも問題ができています。理系とくに医薬系の学生にとっても、英語を学び、自らの専門を考える役にも立ちますし、理系の学生には留学、研究・研修での海外体験は重要です。
現在、大学の英語教育はESP(English for Specific Purposes)英語教育に移りつつあります。「総合テキスト」「TOEIC®テキスト」は時代遅れになりつつあります。そのような流れの中でTOEFLテストをはじめ英語圏の大学留学のための英語テストは多様であって良いのです。なぜならば英語圏への自分の人生の進路決定に繋がっているからです。一方、資格さえあれば、英語さえできれば、という考えは残念だと思います。
近畿大学 教養・基礎教育部門 眞砂薫先生
1976年3月 神戸市外国語大学英米学科卒業。
1980年3月 神戸大学大学院文学研究科英米文学専攻(修士)学位取得終了。
1980年4月 近畿大学教養部助手。
その後、講師、助教授(准教授)を経て近畿大学薬学部教養・基礎教育部門教授(2019年度まで医学部(基礎医学)基盤教育部門の英語教育も兼任)。また1983年より関西学院大学法学部講師。
近畿大学
1949年新制大学として近畿大学が建学、以後現在14学部を擁する総合大学となる。
Webサイト:https://www.kindai.ac.jp/
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TOEFL iBT®︎テスト特別受験制度
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団体対象TOEFL iBT®︎テストバウチャー
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