第25回 Criterion®導入校 | 東京大学教育学部附属中等教育学校 戸上和正先生 ―後編―

Criterion®(クライテリオン)導入校
東京大学教育学部附属中等教育学校 英語科
戸上和正先生

東京大学教育学部附属中等教育学校の戸上和正先生に教育機関向けライティング指導ツールのCriterion®(クライテリオン)の利用目的や授業での活用方法などをお伺いしました。

 

編集部
Criterion®を利用されている理由を3つ教えてください。
戸上和正先生
1つ目の理由は、Criterion®を使うと生徒の自己評価の眼を養うことができるということです。エッセイの分析画面では「こうだ」という正解ではなくて「どう?」と書き手に聞いてくれますよね。あれがいいんですね。特に構成部分では「これは主題ですか?」など聞かれるので、自分の英文を読んで生徒が「あ、こういう風に捉えられちゃうのか、どうしてそうなるのかな」と考えるようになるんですね。

 

▲ 構成に関するコメント

 

戸上和正先生
2つ目はピアグループ機能が使えることです。相互評価がやりやすい環境をオンライン上で作れるのがいいと思います。グループごとの人数は今も検討課題なのですが、グループの中で展開されるコメントが彼らの役に立ってます。

 

▲ ピアグループ設定画面

 

戸上先生
3つ目は、紙ではないのでエッセイの書き直しの際に書き手のストレスが溜まらないことです。本校には卒業研究という取り組みがあり、パソコンで論文を作るため生徒がPCでのタイピングに慣れているので、Criterion®でのライティングもある程度ルールを伝えるだけでストレスなくやってくれます。生徒アンケートにも「煩わしさがないから、もう一回トライしてみよう」というコメントがありましたけれども、やる気が出てくるというのは良い点だと思います。

 

編集部
Criterion®は授業ではどのように利用されていますか。
戸上先生

高校3年生にあたる6年生の「英語表現II」でCriterion®を使っています。本校では英語表現IIは5年・6年で2単位ずつ分割履修にしており、5年生ではディスカッション、ディベート、プレゼンテーション、スピーチなど「口」を使った、「チーム」で取り組む課題が中心です。6年生になってからは打って変わって「個人」で「書く」ことが中心になります。

Criterion®の使い方に関しては私もまだ試行錯誤の最中でやることが固定しているわけではないのですが、一つのトピックに対して2回エッセイを提出してもらい、差異を見られるようにしました

前半はCriterion®で使えるトピックの中から教科書のトピックに近いものを選んで取り組みました。6年生の最初はCompare and Contrastの表現としてブロックスタイルとポイントバイポイントスタイルについて学び、トピックによってどちらのスタイルが適しているか考えさせました。仕上げとして、Criterion®でCompare and Contrastのトピックで提出してもらいました。

後半はまずペアで一つのエッセイを作ってもらい、それぞれCriterion®でそのエッセイを提出してもらいました。この二人で作るエッセイというのは例えば、ボディのコアとなる3つのトピックセンテンスと、それらのオーバービューであるイントロダクション、まとめであるコンクルージョンで構成されます。この時点ではサポーティングセンテンスはありません。その後、一人一人が別々のサポーティングセンテンスを追加してエッセイを完成させて提出します。この結果を見比べることで、どちらがより説得力のある例示や説明ができたかを確かめる活動ができました。結果として同じエッセイを元にした二つの異なるエッセイが生まれます。それらをクラス全体で見比べながら、どのような展開の違いがあるか、サポーティングセンテンスの説得力、コンクルージョンの書き方などに関して議論を行いました。それを二つのトピックで行いました。

その他には、最初に提出されたエッセイに私が内容面についての質問を追加したものを印刷して生徒に配り、質問に対して生徒同士でコメントを記入してもらいましたそして2回目の提出では、書かれたコメントを反映させながらエッセイのリバイズをしてもらいました。

 

 

編集部
Criterion®利用後のアンケートを拝見させていだくと、「英語を書くことに慣れた」「書く量が増えた」というコメントが多くありました。先生から見てもそのような効果はあったと思いますか。

 

戸上先生
はい、ひたすらCriterion®を使って書かせましたからそれは当然だと思います。ここまで書くことはないだろうというぐらい書いてもらいました。先ほど3つの良い点を挙げましたが、4つ目を挙げるとしたらこの点だと思います。やはり英語の作文に対しての力を試すためにはたくさん書く経験を積まなくてはいけません。それもあり、たくさん書いた印象が残っているのだと思います。

 

戸上先生
その他にもアンケートでは「同じトピックで2回サブミットする意味」の評価がかなり高かったですね。

 

戸上先生
書き直しに意味を持たせたので、私の意図がちゃんと伝わっているか確認のための質問でした。比較的伝わっていたことは良かったです。

 

▲ アンケート結果:1=全く感じない 5=大いに感じる

 

編集部
1年間で1人の生徒さんが何回提出したのでしょうか。

 

戸上先生
5トピックで1人10回ほど提出しました。
編集部
戸上先生が指導において大事にしていることは何ですか。

 

戸上先生

私としては形成的評価、つまり学習者がどのようにリフレクションし、うまく自身の学習内容に活かしていくのかということに興味があります。そういったこともありペアでお互いにエッセイを見せ合ったり、Criterion®の構成部分を自分でしっかり考えるような、振り返る時間を作ってあげたいと考えています。今の授業の構成では最後の5分を振り返りの時間に取るような形があるんですが、教師としては5分も取れればすごいなと思うと同時に、学習する側としては「この内容を5分で振り返るの?」と思う時もあると思うんですよね。だから振り返り自体を授業にしてしまう時があってもいいんじゃないかという発想もあります。

そのくらいリフレクションは大事だと思いますし、特にここ10年ぐらいでそのような時代がやってきたと感じています。授業を受ける学習者側に「どんな変化をもたらしてあげるのか」というところが本来的なことですので、生徒達には「フィードバックするスキル」「自分をリフレクションするスキル」を身に付けてもらいたいですし、さらにそれらを自分の中に組み込んで自分を評価するメタ認知的な力というのは、言っただけではできないので、教師の指導により実行させる。そういうことはどの授業をやるにしても重要視していきたいと思っています。

 

編集部
先生にとってライティングとはなんでしょうか。

 

戸上先生
言語技能の中では順序的にも最後の技能であり、人間の知能を象徴する技能だと思います。改めて考えると書くことができるってすごいことですよね。そういう意味でも大事にしたい技能だと思います。

 

編集部
今後の授業でやってみようとか変えてみようと思われていることはありますか。

 

戸上先生
4月からの新6年生の英語表現IIでは事前準備として単文レベルや構文の確認がとても重要になると考えています。Criterion®の操作の慣れを目的にトピック出しつつ、そこで使える構文や文法にあえて縛りを設けて数回エッセイを提出させてみたらどれくらい書けるようになるかというのをやってみたいと思っています。つまり自由に書かせすぎないやり方を前半の4~6月ぐらいでやって、それを一通りやったところで生徒が相手の文章をどのくらい評価できるようになるか、というところを見てみたいと思っています。その上で今年と同じようなことが行えればと考えています。

 

編集部
最後に付け加えたいことなどありますか。

 

戸上先生
全体的なこととしては、授業は便利なツールが役に立つ場面だけでなく、ごくごく基本的な指導の積み重ねの部分もあり、色々なものがパズルのピースのように組み合わさって初めて出来上がるものであり、何か一つだけで完結するようなオールマイティなものはないと思うようにしています。例えばCriterion®にしても、先ほどのような利点もあるんですけれども、やはりそれだけでうまくいかない場面もあり、人間の教員がサポートしていくべき部分があってこそなので、そこら辺のさじ加減や棲み分けという部分が必要なことだと思います。Criterion®が大学の教育で継続的に使用されているということはそれだけニーズがあるわけで、これからはより一層中等教育でも必要なツールになっていくのではないかと思っています。

 

編集部
ありがとうございました。

 

 

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東京大学教育学部附属中等教育学校 英語科
戸上和正先生

千葉大学教育学部卒、千葉大学大学院(教育学修士)修了。10数年私立高等学校の外国語科教諭として務めた後、現職につきました。今年で12年目です。ここ数年は探究型学習、プロジェクト型学習と協働に関する研究に勤しんでおります。英語でどんな世界を広げてあげるか。これが今の私の最大のテーマです。教育界のみならず、生きている限りたくさんの方々と語り合えたら幸せです。気軽にご連絡を!

東京大学教育学部附属中等教育学校

前身は1921(大正10)年創立の7年制の東京高等学校。1948年に新制中学校として編成され、その翌年に新制高等学校が発足。以来、中高一貫教育における教育研究と教育実践の連携の場として重要な役割を担う。「双生児研究」「6年一貫カリキュラムの研究」「協働的な深い学び」「卒業研究を含む総合学習」「教員・生徒・保護者が一堂に会する三者協議会」などの独特な取り組みは多くの教育研究者から注目されている。
URL:http://www.hs.p.u-tokyo.ac.jp

 


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