第33回 Criterion®導入校 | 東京大学教育学部附属中等教育学校 戸上和正先生

 

 

Criterion®(クライテリオン)導入校
東京大学教育学部附属中等教育学校 外国語科 教諭
戸上和正先生

3月に開催された教育機関向けライティング指導ツールのCriterion®(クライテリオン)オンラインセミナーでは、東京大学教育学部附属中等教育学校の戸上和正先生に登壇いただきました。今回はセミナー内でのお話をまとめました。Criterionを使った効果的なライティング指導の成果をお話いただきました。ぜひご覧ください。

 

 目次
 Criterionの導入の経緯をお聞かせください
 Criterionの授業でのご使用方法について教えてください
  授業でCriterionの使用を開始するタイミングについてお聞かせください
 Criterion導入によって生徒や先生ご自身の変化などはありましたか
 エッセイの内容面の評価はどのようにされていますか
 機械翻訳についてはどのようにお考えですか
 Criterionの使用感をお聞かせください
 Criterionの使いにくい点を教えてください
 それでは最後に、CriterionやETSに今後期待することや、先生のご展望についてお話を伺ってもよろしいでしょうか

 

Criterionの導入の経緯をお聞かせください

 

編集部
本日はどうぞよろしくお願いします。
戸上先生
東京中野区にある東京大学教育学部附属中等教育学校で外国語科の教員をしている、戸上和正と申します。よろしくお願いいたします。

 

編集部
Criterionの導入の経緯をお聞かせいただけますでしょうか。

 

戸上先生
Criterionと出会ったのはだいぶ前、2003年くらいだったと思うんですけど、前任校の私立高校で同僚の紹介で知りました。今となっては懐かしい「ライティング」という授業で導入しました。当時はまだ授業でパソコンを使うこと自体が珍しかったんですけど、それに加えてオンラインで瞬時に返ってくるみたいなところで、それだけでも驚きがありました。
Criterionの主旨としては、エッセイの構成をしっかり捉えて、「これで大丈夫ですか」って聞いてくれるんですね。「添削してしまわない」というのが特徴だと思って、ずっと利用させてもらってます。

 

 

戸上先生
このOrganization and Developmentっていう部分なんですけど、こうやって色分けすることで、Criterionが「これはトピックセンテンスですか」とか、「これはサポーティングセンテンスですか」っていう聞き方をCriterionがしてくれるんですね。(資料1)

 

 

戸上先生
そして、Criterionは間違いを指摘してくれるんですけど、それを直すのではなく「直してみようね」っていうスタンスでいるっていうところがいいかなと。それで学習者が自ずと思考して作業できるという点に惚れ込んでます

 

Criterionの授業でのご使用方法について教えてください

 

戸上先生

ここ数年は高校3年生の「英語表現II」で使っています。4単位の科目なんですけど、本校では2単位ずつ分割で履修させる形を取っていて、高1で「英語表現I」、高2、高3で「英語表現II」を2単位ずつ取ります。新カリキュラムの「論理表現」がI・II・IIIと2単位ずつ分かれてますけど、ちょうどそれを先取ってやってるような感じですね。

年間の基本的な流れとして、(トピックの種類を意味する)「モード」をCompare and Contrastから始めてExpository、そして最後にPersuasiveという順に流していきます(資料2)。

 

 

戸上先生
それぞれのモードで扱うものとして、Compare and Contrastでは”Books vs. Movies”(資料3)、”E-mails vs. Letters”、Expositoryでは”Teaching Styles”や”Technology’s Effect”、”The Ever-changing You”、Persuasiveでは”Virtual Students”、”Extracurricular Activities”といったトピックを扱いました。

 

 

戸上先生
さらにCriterionでは教員ユーザーがトピックを追加することができます。これは私が作った一つの例なんですが、日本で英語を第二公用語にするという話題が教科書に載ってまして、そこから私がいろいろ資料を読み漁って調べた日本の過去の状況等を説明した上で、それについてどう考えるかっていうトピックを作りました。こんな感じで教員が教科書に準じた課題を出すことができます。(資料4)

 

 

戸上先生

私は形式面の指導というのは、内容面の指導と連動すると感じています。例えば、Compare and Contrastのライティングスタイルの中に”point by point”と”block”の2つの手順がありますが、どちらの方が「説得力を持たせられるか」や「読み手にとって分かりやすいものになるか」というのを考えながら中身を構成させるようにしています。

形式面をCompare and Contrastでまずやって、次にボディの充実をExpositoryでやって、そしてそれらを含めた全てをPersuasiveでやって完成させるという年間の流れを作ってます。

 

授業でCriterionの使用を開始するタイミングについてお聞かせください

 

戸上先生
Criterionを使うのは高校3年生ですが、導入のタイミングは学習者の状況を見て判断します。高校の授業ですので、学習者の習熟度の平均値やばらつき加減、そういったものを最初に見ます。高2から高3に上がって同じ生徒を継続して指導する場合は大体予測できるので導入が早いです。受け持ってない場合は様子を1か月ほど見ますので、導入がゴールデンウイーク明けくらいになります。うちはちょっと中間考査が早いので、その兼ね合いなどいろいろ考えながら、6月くらいまでには導入する感じにしてます。
原則、年間で3つくらいのトピックはこなしたいと思ってるんですけど、年によって開始時期の違いとかもあったり、生徒の動きもあるので、そのあたりは前後します。Criterionでの提出の回数については、一つのトピックに対して2回提出します。1回提出して返ってきたものに対して、フィードバックした上でリバイスさせて出すわけですから、最低2回は必要になってくる。こちらも完璧を目指させるということよりも、構成部分でよりうまく書けるかとか、中身の部分でもう少しボリュームを増やすとか、そういったことが2回目で出来れば十分と思ってます。

 

 

戸上先生

見逃してしまったミスとか、そういったことは個人で対応できればいいと思っています。授業の中で1回目書かせて、すぐに2回目ってやるよりは色々中身の構成プランをしっかりとやった上で、次の週までにCriterionで提出しておきなさいと。そこがまたオンラインのいいところですよね。それでやってきたものを、ピアやグループの総合評価で中身を確認しつつリバイスをしていくと、そのリバイスはその授業内でやるっていうようなことを目標にして動いています。
以前実施した生徒アンケートの「同じトピックを2回サブミットする意味があると思いますか」という質問では、多くの生徒が意味があると感じているという結果になりました。(資料5)

 

同じトピックを2回サブミットする意味(1:ない 5:十分にある)

 

戸上先生
Criterionでは語数が少ないよりも多いほうがスコアが高くなる傾向があります。当然、語数が多ければ内容にボリュームができるので、生徒も語数を多く書けばスコアが高くなることに気づいていきます。そこで大半の生徒は、イントロダクションで自分の主張だけを述べるのではなく、General Statementから主張に入るっていう作りを覚えていったり、ボディのSupporting Sentenceにより充実した内容を入れてボリュームアップさせていくといったやり方に気付きます。一方で、少し方向を間違える生徒も少なからずいて、とにかく長く書けばいいと思って冗長な表現をいっぱい入れたり、言い換えばっかりしてみたりとか、そういったことをしてしまう生徒も出てきます。そういう時はスコアを表示させないように設定を変更することもあります。

Criterion導入によって生徒や先生ご自身の変化などはありましたか

 

戸上先生
先程申し上げたように年度末にアンケートを実施しているので、少し紹介します。

 

・自分にどんな文法ミスが多いのか分かった
・冠詞の扱いに意識的になった
・自分で文を書くので理解できる文法と分からない文法を知ることができるなど、言語形式面の気付きの部分が一番多いです。
更に、
・作文の能力が上がって英語外部試験で英作文が得点源になった
・受験勉強として単語や文法をインプットしたものをアウトプットできる良い機会になった
というように、外部試験や受験に有用であるといった発言もありました。私がこの授業でCriterionを使っている意味のところで反応してくれた回答としては、
・エッセイを書くのに慣れる
・日常的に英語で文を書き出す練習ができたので良かった
・英語で長文を書くことに全く慣れていなかったが、書けるようになった
・文章の書き方の構成を学ぶことができた
こういう声は毎年聞くことができます。

 

戸上先生
あと、私の負担という面では、英作文っていうと毎回添削をしていくのですが、そうすると全部読んで20人くらいでまあ疲れますよね(笑)。でも、生徒には何回も書かせたいんですよね。だから紙ベースとオンラインどちらも併用して、Criterionを使うところと私の方で見るところ、みたいに「使い所」を分けることで時間削減と労力削減ができて、凄く役立ってます。

 

エッセイの内容面の評価はどのようにされていますか

 

戸上先生

エッセイは何のために書くのかっていうと、当然伝えたいことがあるからですよね。そうするとフリーライティングみたいに自由なテーマで書かせる方がいいと思うかもしれません。しかし、いろんな内容に分散してしまうと指導面で収拾がつかなくなってしまいます。そのために、先ほど述べた通り、最初はライティングスタイルを指定して、トピックについても、教員として生徒のことを理解している私が、彼らのエッセイの内容がある程度予測のつくトピックを選んでいます生徒間での内容評価についても、生徒が相手のエッセイの内容を見て動く為には、どのポイントに対してどういうコメントを出してあげたらいいかっていうのも考えさせなければいけないので、提出された内容を印刷して並べて一緒にサンプルとして見せて、「こんな感じでコメントしてあげてね」ということを伝えます。

こういうことは、テーマを広げすぎないからこそできるようになります。

このように、内容は重要だよってことを伝えて、自分たちでも評価しあえるんだよっていう経験を通させます。それが内容面の評価に関して気を使っているところですね。

 

 

機械翻訳についてはどのようにお考えですか

 

戸上先生
機械翻訳は推奨しませんが、あまり言及もしません。使う子は使うのですが、使いながら徐々に分かってくることがあって、自分が知らない表現とか単語を使っていると、それを後でクラスメートに指摘されると自分が困るんですよね。そうすると今度はバランスよく使い始めます。例えば自分で作った英文を入れて、日本語で自分の意図した意味になるかっていう使い方をする生徒もいます。逆の使い方ですけどこれは多分どこの現場の先生方でも経験あるのではないかと思います。 内容面でリバイズさせる時に、「この主張の例が分かりづらくない?」とか、「もう少し理由を具体的に言ったら?」「ちょっと調べ足りないんじゃない?」みたいな指摘が出てくると、英文ではなくて、中身に問題があるんだということに気づいてくるので、機械翻訳を使うこと自体にあまり意味がなく、自分の言葉で書かなきゃいけないということに大半の生徒は気付きます。このように徐々に解消されていくのと思っているので、やはり生徒間あるいは教員による内容評価が重要になってくると思います。

 

 

Criterionの使用感をお聞かせください

 

戸上先生
何よりも結果がすぐ返されることで、さっき言ったようにスコアを表示しない設定も可能なので、クラスの状況、主要な目的などによってそういったことが選択できます。後は自分の作ったトピックでも採点できる点とかもいいと思ってます。

 

 

Criterionの使いにくい点を教えてください

 

戸上先生

スコアリングの根拠にちょっと疑問が出る場合が多少あります。それは機械ですので仕方ないところはありますね。

あとはトピックが時代を反映していないものが最近出てきてます。

また、ファーストドラフトとセカンドドラフトを並べて比較して分析したいんですが、それはできないんですよね。そういったことを改善していただけると、より使いやすくなるかなと思います。

 

 

それでは最後に、CriterionやETSに今後期待することや、先生のご展望についてお話を伺ってもよろしいでしょうか

 

戸上先生
私自身の今後の展望としては、Criterionのユーザーの先生方とコミュニケーションを取ったり、より効果的な使用法に向けて情報交換できたらいいなと思ってます。その為にはETSさんが架け橋となっていただけるといいなと期待しています。

 

編集部
ありがとうございました。

 

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東京大学教育学部附属中等教育学校 外国語科 教諭
戸上和正先生

千葉大学教育学部卒、千葉大学大学院(教育学修士)修了。10数年私立高等学校の外国語科教諭として務めた後、現職につきました。今年で13年目です。ここ数年は探究型学習、プロジェクト型学習と協働に関する研究に勤しんでおります。また、学習者同士の相互評価から課題を導ける自律した学習者の実現に向けて、Criterionに頼りながら試行錯誤しています。英語でどんな世界を広げてあげるか。これが今の私の最大のテーマです。

東京大学教育学部附属中等教育学校

前身は1921(大正10)年創立の7年制の東京高等学校。1948年に新制中学校として編成され、その翌年に新制高等学校が発足。以来、中高一貫教育における教育研究と教育実践の連携の場として重要な役割を担う。「双生児研究」「6年一貫カリキュラムの研究」「協働的な深い学び」「卒業研究を含む総合学習」「教員・生徒・保護者が一堂に会する三者協議会」などの独特な取り組みは多くの教育研究者から注目されている。
URL:http://www.hs.p.u-tokyo.ac.jp

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